4月になり、新しい環境でスタートされる方も多いと思います。
今回は、働く方に向け、職場の健康を守る産業医についてお話いたします。
■産業医とは?
産業医とは、職場において労働者の健康管理等を行うために、事業者に選任される、資格を持った医師のことです。
常時50人以上労働者を使用している事業所には、産業医の選任をしなければなりません。(労働安全衛生規則 第13条)
※労働者数50人未満の事業所については産業医の選任義務はありませんが、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師等に、労働者の健康管理等の全部または一部を行わせるように努めなければならないとされています。 相談窓口(無料です)→地域産業保健センター(厚生労働省HP) 各都道府県産業保健総合支援センター(サービス内容は「健康診断結果に基づく医師からの意見聴取」「脳・心臓疾患のリスクが高い労働者に対する保健指導」「メンタルヘルス不調の労働者に対する相談・指導」「長時間労働者に対する面接指導」等です)
■産業医の業務
では産業医は職場で何をするのでしょうか?
具体的に挙げてみます。
①安全衛生委員会への参加
産業医の他に、衛生推進者などの衛生管理に携わる方や総務の方が月1回会を開き、労働者の健康や職場の安全衛生に関することなどを話し合います。
個人情報の守秘義務があります。
②月1回以上の職場巡視
職場をまわって、きれいに整理整頓されているかどうか、非常口は確保されているか、備品は備わっているか、温度や湿度・照度に問題は無いか、衛生状況はどうかなどを実際に巡視して、それの改善点を安全衛生委員会で話します。
③労働者との面談指導の実施と健康を保持するための措置
長時間労働などで疲労の蓄積が認められる労働者、または、産業医との面談を申し出た労働者などと面談し、指導します。
また、労働上の措置が必要と思われた時は、時間外労働の制限、出張の制限、労働時間の短縮、医療機関への受診勧告、紹介状の作成などをすることもあります。
④健康診断結果の就業区分判定
健康診断結果に基づき、問題なく働けるのか?を判定します。
例えば、健康診断で難聴とめまいを指摘された方がいたとして、6か月後に経過を見ましょう、という健康診断を実施した医師の判断があったとします。普通ならそれで問題はありません。ただその方がもし高所作業に従事していたら、めまいや難聴は命取りになりかねません。それはすぐにでも他の作業に移った方がいいですよね。健康診断を実施した医師は、その方の労働内容まではわかりません。ですから、その方の労働内容を知っている産業医が、健康診断結果に基づき就業について意見をします。この場合は、「高所作業などの危険を伴う作業以外への配置転換」を会社に進言することになります。
今年の12月から開始されるストレスチェックの判定も行います。
⑤復職プランの作成
休職されている方と面談し、復職の可否の意見書を提出したり、その後の復職に向けてのサポートや、復職してからのプラン作りなどをします。
⑥健康相談
希望の労働者の健康の相談にのります。
例えば、「あごが痛いけれど、どこの科に行けばいいのか?」とか、「健康診断の結果で、高脂血症を指摘されたけれど、どういう食事を摂ればいいのか?」などの相談にも応じます。
■産業医をうまく使うには?
産業医は基本的に診察や処置、注射などの医療行為はしませんが、労働者や職場の健康管理を行い、指導アドバイスをします。
何か自分の健康で問題が生じたとき、または生じそうなとき、不安があるときはぜひ、その事業所で選任されている産業医と面談をしてください。
その時には仕事内容や、労働時間などの就業状況や、心身の疲労についてや、自覚している症状、そして睡眠・食事などのプライベートな生活状況まで、様々なことを訊かれると思います。
なるべく率直に答えて頂ければと思います。
会社側に筒抜けになるから遠慮したい、という方もいらっしゃるかもしれませんが、産業医は守秘義務があり、また、労働者本人の同意無しには労働者の主治医と連絡をとりません。
実際に労働者の心身が不調になり、病気により休職となる前に、その原因を探り、職場に問題があればその措置をとることが、事業者側も、労働者側も、とても有意義なことだと思います。もしその労働者が疾患により休職すれば、もちろん本人にとっての一大事だというだけではなく、事業者側は急きょ新しい人材の確保と教育をしなければなりません。病気になり休職になってしまうのは、労働者本人はもちろんのこと、事業者にとっても、望ましいことではありません。
(作成:産業医 早稲田)